コロッケを揚げる

卵焼きを作るためだけに存在する長方形のフライパンがある。
小学生の頃、家には普通のフライパンしかなかったので、卵焼きを焼くと楕円形みたいになった。友人の卵焼きは長方形で、その卵焼きに対する憧れが強かった。試行錯誤してみるも、やはり楕円形の卵焼きしか作れない。卵焼きを作るためだけのフライパンの存在をしったのはずいぶん後のことである。

いつの間にか長方形のフライパンがわが家へとやってきた。
初めてそれを使ったときのわくわく感。十分にフライパンを熱するまで我慢できなかったせいで失敗したような気がする。今では卵焼きを作る以外にも、数本のソーセージを焼くときに使ったりもする。

冷凍庫にコロッケが入っていた。業務用スーパーとかで買えそうな揚げるだけのコロッケ。揚げることにした。
揚げ物用のフライパンを使えばいいものの、手にしたのは長方形のフライパンだった。手軽な気持ちで調理に向き合いたかったのだろうか。
いずれにせよ、フライパンに油を流しいれる。想像以上にタプタプになってしまったフライパン。そこで量を少なくしたりするべきだったのに、おれはそのまま火にかけた。
頃合いを見計らって冷凍コロッケを油へと落とす。
アルキメデスだかどっかの哲学者が、風呂に入った時あふれ出たお湯に閃いて街を裸で駆け回ったエピソードがある。自分の体重分押し上げられたお湯がこぼれる。
コロッケを入れたことによって、お湯よりさらに危険な油がフライパンからあふれ出た。それを見つつも、ふたつ目のコロッケを投入する。さらに油はあふれ出た。

じわじわとコンロを侵食していくぬるぬるの油。一度こぼれてしまったぬるぬるはそれほどの熱さを持ち合わせていないだろうと思って、キッチンペーパーでふき取ってみる。フライパンの底の部分からこぼれてしまった炎がキッチンペーパーに引火したりした。

雑になっていく生活を思う。